手をのばせば消えてしまう、あえかな幻影のような
………それは、そんな少女だった。
地球の裏側のどこかの国で小都市が壊滅したその年の秋。
常人ばなれした身体能力と獰猛な気質をもって生まれ、
どこにも居場所を見出せぬまま生きてきた青年・鹿島新太郎は
暴力沙汰の末に逃げこんだ夜中の屋上でひとりの少女と邂逅する。
銀色の髪、真紅の瞳。
白皙の肌に黒衣をまとった異邦人。
この物質世界の住人とは思えぬ儚く美しい存在。
謎めいた言葉を残して彼女は消えた。
まるで初めから存在しなかったみたいに。
その夜をさかいに新太郎の人生は一変する。
彼の暮らす地方都市で繰り広げられる闇の勢力同士の抗争。
つぎつぎと姿をあらわす術者・異能者たち。
やがて運命の冷たい魔手は新太郎を絡めとり
肉体の深奥に秘められた古の血脈の力が目をさます。
引き返すことのかなわぬ分水嶺を乗り越えて
異能の闘いに身を投じた彼を待つものは………!?
墜落天使………
それは、翼をなくした獰猛な天使たちの物語。